ネットコンパスのブログ

「研究室を未来へつなぐ」

株式会社ネットコンパスは、いわゆるネットバブルが弾けつつあった2000年に設立されました。当初は、他の多くの企業と同様にWebサービスを中心としたビジネスを想定していましたが、幸いなご縁に恵まれ、その後は研究所や大学などの研究機関を主なお客様とする事業を展開してきました。

今回は、自分自身のこれまでを振り返りつつ、当社の「歴史」についてお話ししたいと思います。

研究者として・プログラマとして

私は情報工学の博士号を取得しています。専門分野を簡単に言えば、人工知能です。実際に取り組んでいたテーマは、録音された音楽を入力として譜面に変換する、いわゆる「自動採譜」という技術でした。現在では深層学習の発展により精度の高い処理が可能になっていますが、当時は試行錯誤の連続で、期待通りの結果がなかなか得られず苦労したことを覚えています。

一方で、私は根っからのプログラマでもあります。小学生の頃、まだ自宅にコンピュータがなく、ノートにプログラムを書き殴って満足していたことを思い出します。また、塾へ通う途中に立ち寄った電気店で、展示されていたPC-6601を使ってプログラムを書き、しゃべらせて楽しんだこともありました。自分の書いたプログラムが思い通りに動いたときの喜びは、今でも忘れられません。

その後、研究を通じて先輩方の優れたコードを読み込み、スキルを磨くことができました。その結果、より大規模かつ複雑なプログラムを構築できるようになり、プログラミングのアルバイトで資金を貯め、会社設立の資金に充てることができました。

経営者として

「研究の場にいた」そして「プログラムが組める」人間である私にとって、研究を本職とする方々をサポートする現在のビジネスは非常に適していると感じています。しかし、経営者として、自社のサービスの在り方について考える日々は今も続いています。「楽しいから」「得意だから」だけでは、ビジネスとしては成立しません。

お客様に「価値」を提供し、その対価をいただくのがビジネスの基本です。では、自分たちが提供できる「価値」とは何なのか――その問いに対する答えを見つけるための試行錯誤は、終わりがありません。

研究室を未来へつなぐ

これまで多くのお客様と関わる中で、「研究成果をどのように世に出すか」という悩みを抱えている方が多いと感じています。論文発表など研究者としての成果は重要ですが、「研究のための研究」に留まらず、社会に役立つ形で研究を届けるためにはどうすればよいのか、という課題に直面されている方が多いのです。

また、研究成果が世で活用されるためには、手法やアルゴリズムの優秀さに加えて、システムとして安定的に稼働することが求められます。さらには、小規模なデモンストレーションで見栄え良く動作させることも、ステークホルダーの理解を得るために重要です。

しかし、研究を本職とする方々がデータ分析のためのプログラムを書くことはできても、実用化を見据えたシステム開発には、また別のスキルが必要です。中にはプログラマとしても卓越したスキルを持つ研究者の方もいらっしゃいますが、そのような方々でも、研究に集中する時間を確保したいという思いをお持ちではないでしょうか。

このような状況で、当社が提供できる「価値」とは何か。それは「研究成果を世に出すためのお手伝い」です。この思いこそが、「研究室を未来へつなぐ」というフレーズに込められています。

株式会社ネットコンパス
代表取締役 木下智義